「え、だって心護様、いつもわたしとは目も合わせてくれなくて……いやいやながら許嫁でいるものとばかり……」

「………」

心護は頭を抱えた。

公一と詩は、にっこり笑って心護を見る。

「若君? どこをどうすればそんな勘違いをさせるに至るんですか?」

「琴理様のお考えを知っても同じ態度なのですか? バシッと決めなさい」

琴理には謎の叱咤をされた心護は、

「……うん。ごめん、琴理、そんな風に思わせていたなんて」

「……違うのですか?」

「俺との婚約の件は、俺が頼み込んだんだ。その……琴理が可愛くて……」

「は?」

今度は琴理がそういう番だった。

「心護様……眼科、行かれますか?」

思わず琴理がそう言ってしまうと、心護ははっとした顔になる。

「いや問題ないから。俺が琴理に一目惚れして、こんな可愛い子を放って置いたらすぐに彼氏できてしまうと思って……頼れるところすべて頼み込んで琴理と許嫁になったんだ」

「………心護様」

「……ああ」

「わたしと妹を勘違いしておられませんか……?」

琴理は信じられないあまりそんなことを言ってしまった。

今までのどこをどう見れば心護に好かれているどころか、一目惚れをされていたと思えるのだ。

そうでなくても琴理は自己評価がかなり低かった。

「今までろくに話したこともないですよね……?」

琴理が恐る恐る言うと、心護はうっと息を詰まらせた。

「それは……琴理を前にすると緊張してしまって……それに可愛すぎる琴理と許嫁だと思うと感極まってしまって……」

「………」

な、なぜそうなる。

(え? 心護様、何か悪い病気? 目が悪いの? それとも頭がおかしいの?)

とんでもなく失礼なことを思ってしまった琴理だが、それだけ衝撃的な話だったのだ。

そしてなかなかその言葉を、言葉通りに受け入れられない。

はあ、と詩と公一がため息をついた。