琴理の母の件は、犯人の男が生きていればまだ救いはあった。

だが、呪いの情報すべてを持って、男は口をつぐんだまま死んでしまった。

――それこそが、強力な『呪い』だ。

幸せになることは許さない、と。

「琴理、俺もその件に加わっていいだろうか?」

「……加わる、ですか?」

「花園殿とは別のルートを探ることも出来る。琴理の大事な人なら、俺も生きてほしいと思う」

真っすぐな心護の言葉と眼差しに、琴理は泣きそうになった。

今まで、周りの人たちが愛理のために尽力しているとわかっていたからこそ、誰にも言うことは出来なかった。

この不安を。

「私もお手伝い致します。近年、退鬼師の家自体が少なくなっていますからね。花園様の血筋の方には、どうにか回復していただきたいものです」

公一にもそう言われて、琴理は頭を下げた。

「……ありがとう、ございます……っ」

愛理が生きられる手段が見つかるかもしれない――そのことに、琴理の心は浮き上がってきた。

「ではまず、うちに帰ろう」

「へっ?」

「宮旭日の家だ。花園殿には連絡ついているな?」

「ええ、承諾は取ってあります」

「なんの承諾……ですか?」

「琴理様を宮旭日の家にお迎えすることへの承諾です」

「……はいっ!?」

――なんだか本当にとんでもないことになってしまったかもしれない。