「……晶はなんでプロチームからのオファー断ったの?」

「ん?」

「ずっとプロになりたがってたじゃん」

「あぁ、まぁな」

「晶にオファーがきた時、学校中大盛り上がりだったのにさ。晶断っちゃうんだもん。顧問の先生の落胆具合見てたらちょっと可哀想だったくらい」

「はは……いやぁ……まぁ、俺にも色々と思うところがあったんだよ」


晶は、中学で頭角を表し県内でも有数のプレイヤーになっていた。その頃からプロを目指すと事あるごとに言っていたから、オファーが来たと知った時は私も嬉しかった。

すぐに承諾するだろうと思っていたのに、断ったと聞いた時は衝撃を受けた。

しかし高校に入ってからは疎遠になっている身としては、わざわざ聞きに行くのもどうなんだと思って聞けなかった。

加えて、全国大会に出場したことにより晶は女子生徒から絶大な人気を誇るようになっていた。迂闊に話しかけて妬まれたくなかったというのが一番大きいかもしれない。


「晶が誰よりも練習頑張ってるのは知ってたし、その努力が認められて評価されたり実力も伸びてきたのは知ってた。それに昔からプロになりたいって言ってたから、てっきりOKしたとばっかり思ってたんだよね」

「俺も最初はそう思ってた。プロからスカウトが来たら、すぐにOKするつもりだったし自信もあった。だけど、実際にスカウトされてから改めて考えてみたら、俺レベルの選手なんて世の中ゴロゴロしてるからプロになってもどうせやっていけないと思ってさ。それでやめたんだ」

「そうなの? 全国まで行ったのに?」

「全国に行ったからこそ痛感したんだよ。俺レベルの実力じゃプロでは通用しないって。簡単に言えば自信無くした。声かけてもらって、頷くのが急に怖くなったんだよ。情けねぇよな。でもサッカーをやめたくはなかったから悩んでてさ。その時に推薦の声をかけてもらったから、大学もいいかなと思って」

「そうだったんだ……」


今までそんな胸の内を明かしてくれたことなんてなかったから、少し意外だった。

晶はいつも自信に満ち溢れている印象だったから、まさかその自信を無くしてしまうほどだったとは。

それほどまでに強かった、全国大会という大舞台。

改めて、晶は本当にすごい場所で戦ってきたんだなと思う。