次は『速』魔力の試練に挑戦だ。

 ここの試練も簡単なもので、ただ反復横飛びをするだけでいい。

 だがここで頑張り過ぎると『攻』魔力と『精』魔力の試練の成績が下がってしまう。…のだが。

 手抜きはなしだ。自重するつもりはまったくない。だって。


(『速』魔力は……超重要だ。)


 速さは前世の俺が一番憧れた能力だったし、実際に重要極まる。

 どんな強い攻撃手段を持っていようが、動きが遅くて当てられないなら無用の長物と化すからだ。実際に前世では散々悔しい思いをした。

 そしてそれは、自分だけでなく敵にも言えることだろう。どんな恐るべき攻撃を持つ敵だろうが、それが回避可能と分かっていれば怖さも半減するからな。

  
『制限時間内に可能な限り反復横飛──「ばっちこーーーい!」最後まで言ってないのに…ええい!始め!』


 謎の声め…またフライング気味にスタートしやがった。でも関係ない。なんせ俺はもう既に…

 そう、『速』魔力を『先取り』しているからな!この通り──ババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ───どうだこのスピード!

 目にも止まらぬ感じ?それとも残像見えてる?見えてない?

 いや念のため『知』魔力と『速』魔力の相乗効果も発動してるから、周りがゆっくり見えて自分じゃよくわかんないんだよどんだけ速くなってるか。

 でもまあ、最低でも?一流アスリートかそれ以上の領域にはいるはずだ。

 魔力とはそれほど強力なものだ。初期値中堅の『速』魔力値を得ただけでこうも簡単に人間枠からはみ出てしまえる。

 にしても…

(…まだ終わらないのか?)

 もう一度言うが速くなってもその分感じる時間は引き伸ばされるし、その上で回数がとんでもない事になるからな。とんでもなく疲れる。

(いい加減──息切れして──ぐ。マジヤバい──早く止めて──)






『そ、そこまでっ!』

 やっとかよ…つかっ、

「ぶはひゃはぁあああッ!」

 お、おせえよ!空気、空気くれ空気!脚!そして足!つる!いやまだつってないけど!見たことないぞこんなビクビク!?こんなブルブル!? 

『素晴らしい!素晴らし過ぎる!さっきまでのやる気のなさにも困りましたが、これはこれで困ります!あーもう、どうすれば!?』

 なんか謎の声も興奮通り越して混乱している。どうやらとんでもない記録が出たようだ。

『く!これは前例がないですが…よろしい!評価を『M』とします!コングラッチュレーション!おめでとう!』

 エム?…って、

 Mのことか?

 つまり獲得した成長補正がMランクになった。そういうこと?

(いや、Mランクってなんぞ?多分Sが『スペシャル(特別)』だと思うから…Mって『ミラクル(奇跡)』とか?)

 何にせよこんなランクは聞いた事がないぞ。

『と、特典として上位スキル【疾風】…ではなく、希少スキル【韋駄天】を授けます』

 おお!これまた聞いたことがないスキルだが嬉しい!上級スキルどころか希少スキルをゲットしてしまった!

 チュートリアルの段階でこれほどの優遇措置は聞いたことがなかった俺は、流石に気になった。ので、早速と現れたステータス画面を見てみると…



=========ステータス=========


名前 平均次(たいらきんじ)

防御力(G)10
知 力(D)25
精神力(G)10
速 度(M)60


《スキル》

【暗算】【機械操作】【語学力】【韋駄天】

《称号》

『英断者』『最速者』

=========================


「え、えええ!?初期値60うう!?MランクってSランクの何段階上なんだ?」

 その代わりに……なんてこった!

「ううわああああ!『精』魔力がめっちゃ下がっとるううう!?つか、最低値にまで…っっ!マジか!!いや、それより問題なのは…」

 まだステータスに反映されてない『攻』魔力の方だろう。

 『精』魔力の成長補正がGランク…最低ランクになった…というか、これ以上、下がりようがないのでもっと大きく減点されている可能性がある。

 試練をまだ受けておらず、他の試練で『先取り』もしていない『攻』魔力はステータスにまだ反映されてないので確認がとれないが、今回の『精』魔力の下がり方を見れば…その内部成績が相当に下がったことは間違いない。つまり、


「…一体、どんだけ減点されたんだ?」


 この減点如何では、『攻』魔力の試練で最高成績を修めてもGランクだった…なんてことも、最悪ありうる。

(前世でも聞いたことないぞこんなケースは…やばい…また失敗したかもしれん…)

 …だって、どんなに早かろうが最低ランクの攻撃力じゃ、上位のモンスターはさすがにキツい。


 相当に良い武器を持てば倒せるだろうが…成長補正が最低ランクだとレベルアップしても殆んど伸びないからな…つまりは敵が加速度的に強くなってゆく遠くない未来、その武器も通用しなくなれば確実に…

「…詰んじまう。 …いや待てよ?」



 そうだ。打てる手なら、まだある…かもしれない。


(思い出せ俺。おまえは回帰者だろ?)


 前世で聞いた事がないケースだろうが関係ない。その前世の知識を元に何か──

(思い付け……打開の策はないか……あ。)



 …とりあえずだけど。


 …思い付いた。



 今獲得した『速』魔力…

 と、『最速者』の称号。

 この二つをうまく使えば…

 でもこれってかなり、分の悪い賭け…


「でも……しょうがない、な」


 試練はもうやり直せない。
 なら分の悪い賭けでも?


「やるしかない…くそ!こうなったらとことんやってやる!次だ次!」


 こうなったらさっさと試練を終わらせて『分の悪い賭け』に挑戦せねばっ!


『やる気になってくれて良かったです♪』

「ぐ…、うっせえ!」

『ええ…、何で怒られたんですか?』