俺もよくやる。
 魔食再び。
 よりにもよって戦闘中に。

 それも生食。

 そんな狂った行動を最初は呆然と見つめていた進化餓鬼共であったが、

「ひぎぃぃ…」
 「あ…ぎ…ぁ」
「えげぇ…」
 「ぎゅぃぁぁ…」

 今や全員が恐れの表情で俺を見ている。襲いかかる意欲は感じられない。

「うぶ…どうやら、やっと…うぇ、成功した、ようだな…うぶえぇ…」

 俺が獲得した称号、『グルメモンスター』が持つ効果にはこんなものがあった。

『モンスターを見ればどこが魔食材か分かるようになる。』

『それを認識した上でモンスターに攻撃すれば、一定確率で恐怖状態に陥れる。』
 
 『恐怖』のデバフ…攻撃してればいつか発動するだろうと思っていたそれが、どうにも掛かりが悪いのだ。

 どうやらそれは、元々狂ってる餓鬼が狂戦士の特性を得てさらに恐れ知らずとなった事が原因。

 それに気付いた俺は、分かりやすいパフォーマンスとして狂い餓鬼の肝臓実食を披露した。のだが、

(うどぅぅえっ!)

 と、餓鬼の肝なら食いなれたと思っていたのに大誤算、物凄い苦悶に襲われた。

 でもよく考えてみれば一般級の格上である狂い餓鬼(ノービス級)の肝臓だ。

 しかも焼きもせず生で食べてしまった。その衝撃が凄まじいのは当たり前だったかもしれない…だってほら、

(うげええええ!!!何で飲み込んだ俺!う、ぎ、げ、があああああ!吐きたい!吐き出したい!内臓に手を突っ込んで掻き出してしまいたいいい!!うがあああああああ!内臓!内臓が焼ける!溶ける!捻れて!弾けるううううう!?)

 …うん。こうなるともう戦闘どころじゃない。今攻撃されたらソッコーで死ねる。でもそんな実情を敵に悟らせる訳にいかない。

(ぐうううううう!ここ、は…我慢だっ)

 それに、幸いとして餓鬼共は今更の恐怖と直面して硬直している。

 かといって…このまま恐怖で動かないままでいられても困るな。

 だってそんな事が狙いでこんな捨て身の行動に出た訳ではないのだから。

 そう思った俺は、
       よせば、
         いいのにっ!

 ズン、

「「「「ひぎ…っ?」」」」

 ズン、

「「「「えぎ…っ!」」」」

 ズン、

「「「「あぎあっ!?」」」」

 鬼の形相(※苦悶の表情を拗らせただけとも言う)で餓鬼の集団へと一歩、また一歩と踏みしめながら、近づいてやった。

 そして直近にいたリーダー級。

 狂い餓鬼組頭の首を、

 動かないのを、、いいことに。


「うおらっ!」ザシャッ!「ぎゃ…ッ!?」

 一閃!そして

「こうなりゃ毒喰らわば猛毒までよぉ!」


 と、漢の覚悟をキめた!キめたった!

 さっきと同じ要領で肝臓を摘出!

 つまりさっきの餓鬼以上の進化体の、つまりのつまり、食せばさらなる悶絶を味わうだろう魔食材を、その場で…ッ、



 また、実っ、食っ!


 そして──


 にぃぃぃ~。血だらけの口元を歪ますパフォーマンスも追加する。

 …曲がりなりにも餓鬼の群れを牽引していた内の一体だ。

 それがあんまりに呆気なく無惨な最期を迎えたのだから、見ていた餓鬼共は遂に、


「「「ぎいいいい、ひゃぎいいいいいいいいィィィイイイいいぃぃぃ~~~~~ッッッ!!!」」」


 やっとか。
 やっと恐怖を爆発させてくれた。



 そして始まったのは…
 
 

「ぐぷっ、…よし、狙い通り…だな…はぁ~」



 再びの共食い誘発。


「そうだっ!強くなれ!弱いやつは、ほら!食っちまうぞぉっ!」


「「「げひぃ!きゃひぎいいぃ!」」」


 煽る俺に恐慌を深める餓鬼の皆さん。

 こうなるとただのチーフ級やリーダー級では収拾なんてつけられない。

 というか、上位餓鬼達も参加してるな。よーし!偉いぞ!

 いや~、未進化の餓鬼が死にたくない一心でリポップ早々、共食いに参加するのを見た時にな。気付いたのだ。

 考えてみればこの餓鬼達も俺と同じなのだと。

 俺が彼らを全滅させなければここから脱出出来ないように。

 彼らだって自分達を簡単に殺せてしまえる『俺という猛獣』と一緒に閉じ込められている悲惨な状態。…で、あるのだと。

 かくして、餓鬼の皆さんは協力体制を解除、俺を襲う事を一旦、諦めた。『俺という恐怖から完全に逃れるには強くなって倒すしかない』と理解してくれた。こちらの思惑通りに更なる進化を目指してくれた。その一方で俺はと言えば…


『【魔食耐性LV5】に上昇します。』
『【強免疫LV5】に上昇します。』
『【強排泄LV5】に上昇します。』
『【強臓LV5】に上昇します。』
『【強血LV5】に上昇します。』
『【強骨LV3】に上昇します。』


(う、ぎぎぎぎぎぎぎ…っ、!!)


 内臓に骨に血液に筋肉と、肉体的に大改変を強制されて消化吸収免疫生成成長分泌大合奏。

 その影響からくる苦悶をひた隠しにしつつ、餓鬼共の狂った宴を監視官さながら、腕を組んで見守るしかなくなってたりして。


(あ、も、……)


 痙攣しながら、下手すりゃ失神しそうになりながら。


(だめかも…)


 時々一瞬だったが、


(ちーーーん…)


 ホントに失神しちゃったりしながらな。


=========ステータス=========


名前 平均次(たいらきんじ)


MP 6099/7250


《基礎魔力》

攻(M)110→? 
防(F)25→? 
知(S)66→? 
精(G)13→? 
速(神)130→? 
技(神)106→? 
運   10

《スキル》

【MPシールドLV7】【MP変換LVー】【暗算LV2】【機械操作LV3】【語学力LV2】【大解析LV5】

【斬撃魔攻LV7】【刺突魔攻LV8】【打撃魔攻LV10】【衝撃魔攻LV10】

【韋駄天LV8】【魔力分身LV3】

【回転LV7】【ステップLV7】【溜めLV7】【呼吸LV8】【血流LV8】【健脚LV8】【強腕LV7】【健体LV7】【強幹LV8】【柔軟LV7】

【痛覚大耐性LV1】【負荷耐性LV8】【疲労耐性LV8】【精神耐性LV9】

【魔食耐性LV3→5】【強免疫LV3→5】【強排泄LV3→5】【強臓LV3→5】【強血LV3→5】【強骨LV1→3】

《称号》

『魔神の器』『英断者』『最速者』『突破者』『武芸者』『神知者』『強敵』『破壊神』『グルメモンスター』

《装備》

『鬼怒守家の木刀・太刀型』
『鬼怒守家の木刀・脇差型』

《重要アイテム》

『ムカデの脚』

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