だけど、今から2カ月前。

高校1年生の2月に、転移していた癌が見つかった。


結果を聞いた両親の表情で、私は察してしまい、姉に頼んで結果を教えてもらった。

複数の場所に転移した癌はかなり進行しており、治療は難しい。余命はもって半年。


癌という病気を知った上での宣告は、絶望を知るには十分で。

短すぎる自分のタイムリミットは、全く実感が湧かなかったけど、家族から笑顔が消えてしまうことは、過去を思い返せば容易に想像できて、それが怖くて仕方なかった。


実感のわかないぼんやりした頭のままで、両親の涙の跡に気付かないふりをしてとにかく笑って。

面会時間が過ぎた後、病室でひとり、頭を抱えて座っていた。


そんな私に寄り添ってくれたのは、莉音ちゃんだった。


「澪音。大丈夫。もう頑張らなくていい。澪音がやりたいように生きたらいい。今度は私が支えてあげる。」


弱々しく笑っていた過去とは明らかに違う、凛とした笑顔だった。


「莉音ちゃん、私、最後まで普通に生きたい。家で皆でご飯食べて学校にも行って過ごしたい。でも、家族の悲しい顔は見たくない」


ぽつりと零れた一筋の涙と本音。

莉音ちゃんは、しっかりと頷いて私を抱きしめた。


「分かった。私に任せてよ」


その日の、悲しさなんて微塵も感じさせない強い笑顔に安心したんだ。