中学2年生の頃、身体に癌が見つかった。

当時は、癌の怖さなんて全く知らず、ただ素直に聞き入れた私。

だけど、診断を受けて戻って来た父母の絶望した表情に癌という病気の怖さを察した。

当時受験生だった姉も、勉強そっちのけで私のお見舞いに来ていて、ほぼ確実だった県で一番の高校の受験を諦めた。


正直、自分が癌になったことではなく、私の病気によって崩れていく家族を見ることが、一番私の神経をすり減らしていた。


「早く良くなりませんか?私、早く治したくて!」

「ねえ!こういう治療があるんだって!がんばろっかな!」

「手術?全然怖くないよ!絶対成功するし!私強いし!」


家族の笑顔のために。

必死で、明るく前向きに、過ごし続けた。


「澪音!よく頑張ったね!」


癌が完治して退院した日に見えた家族の笑顔は、私が願った笑顔そのもので。

凄く凄く安心したのを覚えている。


その日からは、治った私を祝うように、できなかったことをたくさんした。


2カ月に1回は旅行へ行ったし、遊園地や水族館。

思いつく限りの行きたいところへ行った。

行く先々で「来れて良かったね」と幸せそうに笑う家族が嬉しかった。