冷えた手で触るカイロのように、気持ち良いほど温かいその手をぎゅっと握りしめて、私は思いを告げる。


「旭陽、あのね、旭陽にお願いがあるの。
ここまで巻き込んでおいて無理な話かもしれない。

けど出来たら、私のことは忘れて幸せになってほしい。私がいなくなってから、旭陽が辛い思いするの嫌だ。」


真剣な瞳に、旭陽の笑顔が一瞬で崩れた。

その目に光るものを感じて、私も苦しくなる。

だけど私は、彼を残していなくなってしまう私は、旭陽の前で泣くわけにはいかないから。


「そんな辛そうな顔するなら、言うなよ」


旭陽の腕が私を引き寄せて、温かい体温に包まれた。


「言ったよな。俺は強いから、澪音のわがまま全部受け止めるって。俺には強がらなくていいって。」

「でも、いなくなってからまで引きずらせたくない。だから。」


ギュッと痛いほどに腕の力が強められて、私の言葉は止められた。


「忘れない。絶対忘れない。でも、忘れないまま、ちゃんと前向いて生きるから。俺は大丈夫だから。だから、忘れて欲しいなんて言うな。」


その声は震えていて、私の涙腺は刺激される。