「あ、あと私あれも好きだな。旭陽がすっごい寝癖で教室行ったら、セットかと思われて先生に怒られた話」

「うわ、それ俺も覚えてる。まじで理不尽だったよな。」


不思議と眠たくもなくて、身体は自分のものじゃないみたいに酷く重たいのに、頭はすっきりとしていた。


「俺は、澪音が卒業式で指揮者やって、ぼろぼろに泣いてたのが好き」

「あー…なんでそんなこと覚えてんの。旭陽めっちゃ馬鹿にしてきたよね。泣き顔ぶすーとか言ってさ」

「うん、照れ隠し。」


旭陽らしかぬストレートな一言に、私は驚く。


「照れ隠しだよ。友達のことが大好きで、心から泣いてる澪音がすっげえ可愛く思えて。今思えば、あの日が澪音を意識するはじまりだったのかもな。」


本当に大切そうに、優しく私の頬に触れた手のひら。

痛いほどに伝わる旭陽の想いに、私は、苦しくなってその手のひらを握って頬から離した。