「旭陽。もう23時だし。そろそろ帰んな?」

「もうそんな時間っすか。」


もやがかかったようにぼんやりとしている頭の外でわずかに聞こえる声。

ゆっくりと広がっていく視界で、見慣れた笑顔を探すと、その笑顔は後ろを向いていた。


「あ、澪音、起きちゃったね」


先に、目のあった莉音ちゃんが微笑み、その後ろ姿はこちらを振り返る。

私は、安堵の息を付き、その彼に手を伸ばした。


「澪音、のど乾くでしょ。何か飲む?」

「ゼリーがいい」

「おっけー」


部屋を出て行った莉音ちゃんに向けて、旭陽は話の続きを返す。


「澪音が寝たら帰ります」

「ん、ありがと」


小声の会話に、私は旭陽の手を強く握りしめた。


「……らないで…」

「ん?」


莉音ちゃんがいなくなり、すぐこちらに顔を向けた旭陽は聞き返す。