「旭陽の野球する姿が見たくて」

「うん。俺も。あいつ、中学で怪我して野球から離れただろ?それと同時に俺も話せなくなっちゃったんだよね」


穏やかに会話をする私たちに、莉音ちゃんは静かに席を立って離れて行った。


「ずっと話しかけるタイミングを探してた。
だけど、怪我をしてからの旭陽は、人が変わったみたいに威圧的で、なかなか話しかけられなくて。」


私も、久しぶりの旭陽に同じ印象を抱いていたから、大きく頷く。


「だけど、今年になって突然、雰囲気が柔らかくなってるのを見かけたんだ。
その隣には、澪音ちゃんがいて、楽しそうに下校する姿は、中学生のときの旭陽と変わらなくて。それで勇気が出た。」


私は、点と点が繋がったような気がして、大輝くんに訪ねる。


「もしかして、草野球に誘ってくれたのって…」

「うん、俺。もう一度旭陽と野球がしたかった。」

「そっか…。大樹くんのおかげで旭陽はまた野球ができるんだ…、ありがとう。」

「俺こそだよ。きっと旭陽は、澪音ちゃんの存在で変わったんだと思うから」


グラウンドを見つめる大輝くんは、心から嬉しそうな表情をしていた。