「多分、油の量が違うんだよ。まとまり結構変わるから」

「油?すげえ、見ただけで分かんの?流石だな」

「多分だけどさ、」

「えー今からちょっと作ろうかな。キッチン借りてもいい?てか、澪音見てて教えてよ」


そんな旭陽に、私は自然とベッドの外へと連れ出される。

上手く力が入らず、おぼつかない足取りで立ち上がった私の手を優しく引いて、旭陽はキッチンへ向かった。

椅子に座って、旭陽のお菓子作りを見つめる。


「澪音、バターって、」

「あっ、ちょっとレンジで溶かしてからの方が」


「50g…ってこんくらいか?」

「お菓子作りはちゃんと計らないと!!」


気付けば手伝うように立ち上がり、一緒にお菓子作りを始めていた。


「すっげえ…見映えも味も完璧…!やっぱ澪音の作ったお菓子うめぇわ!」

「私はちょっと口出しただけじゃん、旭陽のだよ」

「いいから、澪音も食べて」


ころんと、口に入れられたスノーボールは、さっきよりもさくさくとした食感が残り、程よいところで溶けてなくなる、私のスノーボールだった。


「ふふ、美味しい」


最近は、食べ物を美味しいと思って食べることも減っていて、ただ、栄養のためにと口に入れる日々が続いていた。

自然と、美味しいと思った自分に嬉しくなる。