「お母さん買い物行くよね?旭陽、ついでに留守番頼める?」


気遣った莉音ちゃんによって、家は旭陽と私の二人きりになった。


少しの沈黙の後、私は、ぽつりと口を開く。


「私、余命が宣告されてるの。」


前置きもなく呟いた。

旭陽は一瞬瞳が揺れたけど、私の隣に静かに腰を下ろす。


「余命って、えっと、」

「去年の2月に、持ってあと半年だって。もう7月だから、いつ、何が起きたっておかしくない」

「どうにもならないのかよ」

「うん。中学生の頃から、学校にあまり行けなくなったでしょ。あの時にね、癌になったの。」


再発までの経緯を説明すると、旭陽は黙り込む。

悔しそうな表情に、固く握られた手。


私はそれが悲しくて、目を逸らした。


「納得してるんだ。受け止めて、後悔がないように生き抜こうって生きてきた。

だからね、最初で最後の恋になっちゃった初恋を、素敵な思い出にしたくて、旭陽と仲直りをしようとした。

完全に私の都合で、旭陽に近付いたの。
そのせいで、巻き込んじゃってごめん。」