「今までずっと誤魔化しててごめんね、旭陽。

澪音ね、病気なの。だから休みがちなんだけど。
不良っぽい見た目で誤魔化してるんだ。」


隣の部屋の会話は、耳を澄ます必要もなくはっきりと聞こえてくる。


「なんの病気…、そんな悪いんすか?」

「ううん大丈夫。体調が優れない時期があるだけだから」


私の意思を貫くように、莉音ちゃんは病状を誤魔化して伝えた。


「澪音と直接話させてもらえませんか?」


それでも旭陽は、頑なだった。

やんわりと、莉音ちゃんが伝えていた「話す気はない」という意思を聞き入れる気はないそうだ。


「あのね、旭陽くん。澪音には澪音の想いがあるの。」


口を開いたのは、それまで無言を貫いていた母だった。

私は驚いて、閉められたドアを見つめる。


「それを私達の勝手で崩すことは出来ないから。とりあえず今日は…」


冷静に大人の口調で伝える母。

泣いてばかりの母を悲しませたくなくて、ずっと気を張っていたけどそんな必要はなかったのだと思い知る。