「はー…やり切った!」


穴場スポットの公園へと移動して、座り込む。


「花火大会っつーのに、なにが本命だか分かんねーな」


旭陽の表情は柔らかくて、きっと楽しんでくれている。

私はそれが嬉しかった。


「いよいよ開幕です!」


綺麗な声のアナウンスが流れ、大きな音と共に打ち上げ花火が視界いっぱいに広がった。


「うーわあー!綺麗!すごいねっ!旭陽!」


横を見ると、旭陽は大人な優しい表情でこちらを見ていて、私は黙ってしまう。


「だな、綺麗」


そう言って、見上げながらそっと握られた手に、私は泣きそうになった。


お祭りの間ずっと感じていたこの手の温もり。

そして、向けられた優しい笑顔。


この初恋は、もしかしたら実るのかもしれない。


だけど、今日を越えたら、きっと誤魔化せない。

だから、決めていた覚悟は揺らぐことはない。


「…花火の間だけ。あと少しだけ、許してね」


小さく呟いた声は、花火の音に覆われて消えていく。


「澪音!?なんか言った―!?」


隣から聞こえた大声に、何も知らない笑顔に、私はにこりと微笑む。


「最高の景色だね!!」


私の笑顔に、旭陽は幸せそうに笑っていた。