しばらくして、話し終えた澪音がこちらを振り返る。


「旭陽!ありがと!」


その満面の笑みに、俺は慣れ親しんだゲームの手元が狂った。


「…は?…ってうわ、ミスった。」


久しく見ていないゲームオーバーの画面に動揺しながら、澪音に視線を移す。


「旭陽のおかげで久しぶりに友達と話せた!嬉しかった!」


飲み込まれるような笑顔に、俺は一瞬息をするのを忘れた。

その瞬間に思い出す。


ああ、そうだ。

素直じゃなくてひねくれていて、みんなから距離を置かれがちな俺。

その小さな行動を、意味を、理解して真っ直ぐ受け取ってくれるのが、澪音だった。


勘違いされやすい俺を理解してくれる。

真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる。


そんな澪音のことが、好きだったんだ。


「…っ、は?勘違いじゃねーの?」


突然、新鮮味を帯びて帰って来た彼女への恋心。

意識した途端に、顔が熱く火照って、また素直じゃない言葉を繰り返す。


「うん、そうかも!でもありがと!」


それもすべて分かっていると言わんばかりにお礼を言い、満足そうに前を向く澪音。

彼女の背中が愛しくて、俺は頭を抱える。


俺、今も澪音が好きだ。