「雰囲気変わったのは、澪音もだろ」


俺が切り返すと、澪音は満面の笑みを崩し曖昧に笑う。


「私もさ、色々あって、勉強とか学校とかどうでも良くなっちゃって、さ」


ぼんやりと話すのは、きっと話したくないからで。
そこを無理に深追いする気もなく俺は頷く。


「友達とかは、いないわけ?」

「友達?友達かあ…」


少し考えるように空中を煽ぎ、澪音はまた小さく笑った。


「学校行かないうちに、疎遠になっちゃったんだよね。」


その笑顔は寂しそうで、本意ではないことが伺えた。


「でも、いいんだよ!旭陽とこうやって帰れるだけで私超満足してる!学校行ってる意味あったー!って思ってる!」


真っ直ぐな明るい言葉に、俺は目を逸らしそうになる。


どうしてこいつは、こんなことを恥ずかしげもなく言えるのか。

人よりも素直になれなくて、笑顔もへたくそ。

そんな自覚がある俺は、ずっと澪音が不思議で、それと同じくらい魅力的だった。