「旭陽、雰囲気変わったよね」


帰り道。

澪音の呟きに、俺は視線を向ける。

伺うようにこちらを見つめる瞳が綺麗で、胸が苦しくなった。


「さっきの奴らのこと?」

「とか。野球もやってないみたいだし」


俺は以前、野球部で活躍していた。

少年野球時代から、澪音は大会になると欠かさず応援に来てくれていて、俺はそれが嬉しかった。

だけど、それが周りに冷やかされるようになって。

思春期真っ盛りだった俺は、照れ隠しで言ってしまった。


「お前もう来んな!一緒にいたくねーから!」


みんなの前は冷やかされるから嫌だ。

そういう意味だったその言葉が、酷く澪音を傷つけ離れて行ってしまったのだと気付いたのはつい最近の事。

澪音の言いたいことが何となくわかった俺は、この3年間の出来事を振り返った。


「ちょうど澪音があんま学校来なくなった頃、怪我したんだ。怪我して全部どうでもよくなって、野球はやめた。
高校入学してからも部活入る気になれなくて、ふらふらと出歩いてた時にあいつらに出会ったんだ。

夜遅くに町に居たりするからさ、補導されたりって噂、あながち間違いじゃないんだけど。でも、悪い奴らじゃねーんだよ。」

「そっか、そうだったんだ…。知らない旭陽だね」


あまり良い話でもないのに、澪音は、新しいことが知れて嬉しいというような優しい笑みを浮かべる。

この真っ直ぐで綺麗な心が、その心がそのまま浮き上がったような笑顔が、俺は昔大好きだった。


懐かしい気持ちをぼんやりと思い出し、少し胸が温かくなる。