「俺と帰んだろ。」


私の手を引いたのは、帰ってしまったはずの旭陽だった。

驚きで目を見開く中、守るように肩に触れる優しい手に、私の思考は停止した。

不機嫌そうな彼は、ため息を落としてその手を引く。


「あ、おい、旭陽!?遊ぶなら俺らも!」


背を向けられた友人たちは、戸惑ったように旭陽に問いかける。


「こいつはちげーんだよ」


足は止めないままそう言い残し、旭陽はお友達に背を向けて歩き出した。

彼らと同じ様に強引に手を引かれていることには変わらないのに、痛まない腕に優しい手のひら。


ああ、変わってない。


昔から不器用だった彼は、怖いと思われることも多かったけど。

本当は誰よりも温かくて優しい男の子だった。

私は、旭陽の陽だまりのような温かさが大好きだった。


変わってしまったと思っていた旭陽の昔の面影に、恋心を思い出し懐かしい気持ちになった私。


旭陽の友達なんだから、彼らふたりとも仲良くなりたいと思ったのは事実だけど、やっぱりどこか不安だったようで、温かい旭陽の手のひらに安心していた。