「(仕方ない、明日また誘お…)」


そう決めて、目の前に立つ二人に目を向けると、二人は少し不敵な笑みを浮かべていた。


「旭陽冷たいね?俺らと一緒に帰ろうよ」

「どっか寄ってこーカラオケとかどう?」


誘ってくれる二人だけど、正直そんな気分ではない。


「あ、いや、私は――」


断りかけて、私は言葉を止めた。


旭陽の友達なら、今の旭陽のことよく知ってるかもしれない。

…旭陽を制すためには、周りから。


「澪音ちゃん?行こーぜ」


強引に手を掴み引っ張ろうとするお友達に、私は小さく頷く。


「うん、分かった」


二人は顔を見合わせて、にやりと笑った。


「やっぱ超ノリいいね!仲良くなれそうだわ!」

「澪音ちゃんは、どんな歌が好き?俺らはねー」


やや強い力で引かれ、肉の少ない手が痛む。


「(痛いけど、振り払えない…)」


顔を顰めながら廊下へと出た時、横から出てきた骨ばった逞しい腕によって、私の手は彼らから引き離された。