終業のチャイムが鳴り、次の数学の教科書を準備して気付く。

「(問題集忘れた…)」


頭を悩ませること2秒程で、私は勢いよく後ろを振り向いた。

席に来た友達と楽しそうに会話をしていた旭陽だけど、そんなことお構い無しに私は声をかける。


「ねえねえねえ、問題集忘れたからさ、見せて!」


ピンチはチャンス。

旭陽と話すきっかけになったと思ったら忘れ物も結果オーライ!


「嫌だよ」


たった一言、そう返されても簡単にはめげない。


「えー昔は貸してくれたじゃん!ほら、幼なじみを助けると思ってさー!」


ウザそうにため息をついた旭陽。


「(忘れ物作戦も失敗か…)」


無言の旭陽に、諦めようと視線を外した。


「幼なじみなの?初耳!」

「へえ、可愛いじゃん」


そのとき返ってきたのは旭陽ではないふたつの声だった。

同じクラスになって、旭陽とずっと一緒にいるお友達のふたり。

何度か補導経験もあると噂されるような少し悪目立ちする人たち。


旭陽がこんな人たちと仲良しだなんて思っていなかったわけだけど。

私は、少しの恐怖をかき消すように笑って見せた。


「うん!家も近所で昔から一緒に遊んでて!」

「そうなんだ!俺ら高校入学してから旭陽とつるんでんだ!」

「こんな可愛い幼なじみいるんだったら教えろよな!あ、てか俺の問題集貸すよ!」


不穏な噂とは対照的に、フレンドリーだったふたり。


「えっ、いいの!?ありがとう〜!!」


直接が厳しそうなら、周りから固めるのもひとつの手段か…。

友好的に微笑む私を、旭陽は不満そうに鋭い目で見つめていた。