「ガタッ」
 「あ!!今日太鼓の練習じゃんやっば!」
私は急いで席を立った。赤くて腫れている目をこすりながら
荷物をまとめる。
二人はジャンパーを持ってきてくれた。
 「ありがとう!太鼓頑張るね、また明日!」
 『ばいばぁーい頑張ってね!』
 『無理しないでよ』
お互い手を振りながら私は会館へ向かった。
 会館へ着くと、私の1つ上の先輩であり、私の憧れの人、
音揃 響(おとぞろひびき)先輩が声をかけてくれた。
『おー柚子ちゃん今日は遅かったね』
「響先輩!今日は少し遅くなってしまいました」
『ほれ荷物置いて始めるよ』
「はい!」
ボロボロの手でばちを持った先輩は先生のリズムに合わせて演奏を始める。
その演奏する姿、太鼓を叩く力強さにただ私は
見入ってしまった。
広いホールの中でばちを持って立っているだけの私と
先生の作るリズムの合わせてリズムの合わせて力強く
太鼓を叩く響先輩。
響先輩には人を夢中にさせる魅力がある。
私には、無い。
この虚しさを誤魔化すように響先輩の隣にある太鼓に向かった。
リズムに合わせて太鼓にばちをぶつける。
ドンドコドンドコドン
いつものように日々のストレスを太鼓にぶつける。
何かを本気で叩くことは太鼓しか私にはないから。
ばちをにぎりしめ、太鼓にぶつけたこの音が耳を通ると
今日あった出来事がフラッシュバックされていった―――