束の間の休息は、あっさりと終わりを告げた。
青信号の、青とも緑ともつかない色が目に刺さる。いっそ赤から永遠に変わらなければいいのにと思った瞬間、つま先がどろりと溶けたような錯覚に襲われてひやりとした。
信号が変われば進まなければならない。
進め。進め。進め。〝進んでも良い〟なんて嘘だった。〝進め〟と言っている。信号も、あの人も、どの人も、皆。
息が詰まる。足に鉛が詰まる。詰まって詰まって、もう駄目なのではないかと何度も思って、それでも信号は青になる。
そのせいで、また前に進まなければならなくなる。
振り向くことはできればしたくないけれど、前を向き続けているのも息苦しい。
人の行き交う交差点の隅に立ち尽くしたまま、結局、私は青信号がチカチカと点滅するさまを見届けた。
赤に変わった信号は、再び私に数十秒の休息を――いや、停滞を連れてくる。
深く息を吐き出しながら、私は信号そのものから露骨に目を逸らした。
嘘の休息ごと、この停滞は私の中に延々と降り積もり続け、いずれは私を本当の鉛にしてしまうのかもしれない。
〈了〉
青信号の、青とも緑ともつかない色が目に刺さる。いっそ赤から永遠に変わらなければいいのにと思った瞬間、つま先がどろりと溶けたような錯覚に襲われてひやりとした。
信号が変われば進まなければならない。
進め。進め。進め。〝進んでも良い〟なんて嘘だった。〝進め〟と言っている。信号も、あの人も、どの人も、皆。
息が詰まる。足に鉛が詰まる。詰まって詰まって、もう駄目なのではないかと何度も思って、それでも信号は青になる。
そのせいで、また前に進まなければならなくなる。
振り向くことはできればしたくないけれど、前を向き続けているのも息苦しい。
人の行き交う交差点の隅に立ち尽くしたまま、結局、私は青信号がチカチカと点滅するさまを見届けた。
赤に変わった信号は、再び私に数十秒の休息を――いや、停滞を連れてくる。
深く息を吐き出しながら、私は信号そのものから露骨に目を逸らした。
嘘の休息ごと、この停滞は私の中に延々と降り積もり続け、いずれは私を本当の鉛にしてしまうのかもしれない。
〈了〉