という告白があった翌朝。登校した私は、教室の扉の前で固まっていた。なぜなら、佐々木くんとは同じクラス。ということは、昨日告白してくれた佐々木くんは、今、この中に――

「おはよう、空峰さん」
「ぅわあ⁉ 佐々木くん、おはよう⁉」

 振り返ると、いつもの爽やかスマイルを浮かべた佐々木くんがいた。カバンを持っている所を見ると、ちょうど彼も登校してきたところらしい。私の勘はハズレた、というわけだ。

「やっぱり自分の当たり前は、全くあてにならないや……」
「なんのこと? それより、考えてくれた? 告白の返事」

 え! こんな人通りの多い廊下で、そんな事を堂々と言っちゃうんだ佐々木くんって!

「こ、こっちに、来て!」
「えー、もう朝の会が始まるよー?」

「どうせ先生も遅れてくるから大丈夫! それよりも〝こっちの方が大事〟だから!」
「……うん、了解!」

 どこか機嫌が良くなった佐々木くんは「じゃあとっておきの場所へ行こう」と、私を連れて階段を上がった。向かった先は屋上。雲一つない空の下、私たちは唯一の日陰に身を寄せ合う。

「で、話ってなに?」
「分かってるくせに……。こ、告白のことを、あんなに大きな声で言わないでって……。そういう、お願いです……」

 言ってて、自分で「勝手なこと言ってるかも」と不安になった。だんだん声がしりすぼみになっていくのが分かる。よく考えたら、告白してくれた佐々木くんに「告白は内緒にしてて」なんて。かなり失礼なお願いなんじゃないかな?

「あぁ、そういうことか。ごめんね、次からは気を付けるよ」
「……へ? いや、私の言い方が悪かったっていうか……。謝らないといけないのは、私の方なんだけど……」

「なんで?」
「だって、佐々木くんの方が告白してくれて頑張ってるのに、私が無理難題を押し付けるのは間違ってるっていうか……」

 すると佐々木くんは「そうかな?」と首を傾げた。

「無理難題をおしつけてるのは、俺じゃない?」
「え?」

「だって〝恋をしらない〟空峰さんに告白したんだよ? 高校生が解く問題を、小学生につきつけた気分だよ、俺は」
「……そう、なの?」

 つまり、何の話だっけ。こんがらがって、分からなくなっちゃった。すると佐々木くんは「だから、これから出すね」と人差し指をピンと立てた。

「出すって、何を?」
「ヒント。小学生でも、ヒントを貰えば高校生の問題が解けるかもしれないじゃん……って、この話は置いといて。

 恋をしらない空峰さんに告白しちゃった手前、申し訳なさがあるからさ。だからヒントを出すよ。空峰さんは、そのヒントを頼りに、俺に告白の返事をしてほしいな。どう、なんとなくわかった?」
「……な、なんとなくなら」

 つまり「恋ってなに?楽しいの?」って疑問を持つ私の講師役に、佐々木くんがなってくれるって事だよね。佐々木くんは恋の経験あるって言ってたし、なんだか私……恋を理解できそうな気がしてきた!

「でもヒントは三つしか出さない」
「え、三つ⁉」

「まず一つ目」
「えぇ、もう⁉」

 レアアイテムを無駄遣いしてる気がして気が引ける! でも聞き漏らすことがないように、佐々木くんの声に耳を傾けた。