「これ……」
私が諦めざるを得なかった部活。たまに弥生ちゃんが登校しなくて、恋しくなった談笑。そして「なんで皆して急いで付き合ってるんだか」って不思議だった星カップル――少し前までは、私はこのベストスリーに見向きもしなかったのに。今では、共感しかない。それがなんだか、皆と同じようにちゃんと青春してる気持ちになって……嬉しくなった。
「弥生ちゃんも、彼氏とラブラブって言ってた」
「そっか、良かったね。そして俺たちも、星カップルの仲間入りだね」
「滑り込みだけどね」
「本当だ」
ふふと笑い合う私たち。その頭上で隕石が大きく唸りながら落ちてくるたび、星の輝きを消していく。瞬きが、失われていく。
「なんかさ、流れ星みたいだね」
「にしては大きすぎるけど……本当、そうだね」
どちらともなく、手を握る。いまや夜空は、隕石と星空が半分ずつ占領し合っている。
「これだけゆっくりな流れ星ならさ、お願い事を三回言えるんじゃないかな?」
「あ、本当だ」
深来の言う通りだ。今、この瞬間――私たちは、かなえたい夢を一つだけ唱えられる。
「じゃあ言おうか」
「せーの」
【 この先の未来も、ずっと君といられますように 】
言った言葉が、まさか同じで。私たちは泣きながら、あと二回を言い終わり、そして笑い合った。
「願いが叶うっていうけど、本当かな。……って、迫りくる隕石を見ながら言うことじゃないか。本当に死んじゃうんだね、俺たち」
「でも……、分からないよ」
「分からない?」と、深来が首を傾げる。その姿が愛しくて、手を強く握り直した。
「当たり前を当たり前にしないことが私のいいところ、でしょ? だから隕石が落ちて地球が滅亡するって当たり前も……、もしかしたら当たり前の未来じゃないかもしれないよ。お願い事、三回唱えられたしね」
言い切ると、初めは驚いていた深来だけど、肩の力を抜いて「うん」と頷いた。
ねぇ深来。本当は、あなただって諦めたくないんでしょ? 生きることを諦めたくないから「生き延びたらしたいこと」ってアンケートを取ったんでしょ?
なら、最後まで諦めないで願ってみよう。人生何が起こるか分からないって、私は身をもって経験したから――
「私が恋を理解できるなんて、思わなかったもん。だから深来、先の事なんて分からないんだよ」
「……ほんと、その通りだ」
言いながら、深来は私に唇を重ねた。そして「先の事は分からない、でしょ?」と意地悪な笑みを浮かべる。
「ねぇ詩織。もしも明日がきたら……俺とデートしてくれる?」
「……うん、喜んで!」
今を生きる私たちは、この瞬間に栞を挟む。そして奇跡が起こって未来が開けた時、栞の続きから始めよう。
「どこ行きたい? 詩織は何が好き?」
「遊園地で、ポップコーン食べたい!」
そして注いでいくんだ。瞬く星に負けないくらい輝きながら、隣にいる君に、何度も何度も愛の言葉を注いで行こう。それが私たちの生きる意味だと思うから――
「ねぇ深来、大好きだよ!」
【制限時間の中、瞬く星に、愛を注ぐ】
【 完 】