と、思っていたのに。
「というわけで、地球滅亡まであと三週間です。本来なら引退のかかった試合に気合を入れるところですが……ここで多数決を取ります」
いつもの調子で弥生ちゃんと体育館に入る。だけど、待っていたのは顧問の衝撃な一言だった。
「このまま部活を頑張りたい人、もしくは部活を辞めて自由に放課後を過ごしたい人――この多数決を取ります。必ずどちらかに挙手をしてください。では、多数決をとります――」
◇
「まさか、引退だなんて」
こんな事があっていいんだろうか。引退試合に向けて頑張ってる生徒もいるのに、多数決で「自由派」が勝ったから、部活は休部……なんて。
皆の反応はそれぞれだった。自由派はもちろん喜んでいたし、部活派は落ち込んでいた。最初「は」だけど。
「はぁ、もう部活が出来なくなるなんて……」
「でも、その分遊べるじゃーん。帰りはどこ行く?」
「そんな気分になれないよ……」
「どうせ死ぬんだからさ、楽しもうよ。ね!」
「……うん、そっか。そうだよね」
「でしょでしょー、楽しまなきゃ損だって」
どうせ死ぬんだしさ――
最初は落ち込んでいた部活派も、自由派に諭され次第に笑顔を取り戻していく。結局、最後まで眉間にシワを寄せていたのは私だけで、他の生徒は〝前ならえ〟で体育館を後にした。弥生ちゃんも「なら、しゃーないか」と。あっけらかんと言って、早々に帰宅した。
「〝なら、しゃーない〟、か」
弥生ちゃんには悪いけど、私にとって部活は大事で、大切だ。〝なら、しゃーない〟と、たった六文字で割り切れるものではない。
「はぁ」と。誰もいなくなった体育館を、グルリと見渡す。広い体育館。今頃なら、いくつもの部が熱心に体を動かしているはずだ。もちろん、私が所属しているバドミントン部だって。と言っても、今は人っ子一人いないんだから、もう笑うしかない。
「もしかして皆、〝なら、しゃーない〟なのかな……はは。まさかね」
だけど虫の知らせというか、盛大なフラグというか。
私の「まさか」は、予感的中する。
どうせ死ぬんだから――が暗黙のスローガンになったのか、学校中の気が、押し寄せる波のように次々と緩み始めた。授業中だって関係ない。最初は「お前ら―、ちゃんと聞けよー」なんて言ってた先生だって、今じゃ漫画やスマホを持って教壇で堂々とリラックスしている。生徒に見られてもお構いなしだ。いや、教室に来るだけまだマシで、職員室に籠ったまま出てこない先生もザラにいた。
「ねぇ弥生ちゃん。なんか私、居心地が悪いんだけど……」
「あー、ごめん。これからもっと居心地悪くなると思う」
「どゆこと?」