「ねぇ佐々木くんって何座?」
「牡牛座。空峰さんは射手座だよね」

「当たり。じゃあ、血液型は?」
「О型。空峰さんはA型だよね」

「ふふ、なんで知ってるの」
「さぁ、なんでだと思う」

 くすくす笑い合う私たちの頭上には、たくさんの星が瞬いている。あの星たちも、いずれは隕石の光により霞んで見えなくなるだろう。隕石の光の強さに、負けてしまうだろう。だから一秒、また一秒を大切にするんだ。好きな人のことを、一つでも多く知っておきたい。知っていくと、なぜか満たされた気がするから。安心感に包まれるから。

「ねぇ佐々木くん。すごい今さらなんだけど、下の名前を教えてほしいな」
「……」

 やっぱり、かなり失礼だったかな。ずっと一緒にいたのに「下の名前を知らない」なんて。
「ごめん」と素直に謝る。だけど佐々木くんは怒ってなくて、むしろ柔らかく笑った。

「やった。やっと、聞いてもらえた」
「え?」

「ひそかに目標にしてたんだ。空峰さんが俺の名前を聞いてくれるの。いつ俺に興味を向けてくれるかなって」
「ふふ、なにそれ」

 ねぇ佐々木くん。私ってさ、きっともう、ずっと前から興味があったんだよ。初めて掲示物を貼り替えた時から、ずっと。私が恋愛初心者だから、この気持ちを「恋」だと言い切るまでに時間がかかってしまったけど。

「俺の名前ね、深来(みらい)っての」
「深来……、すごく良い名前」

「詩織って名前、俺も好き」
「知っててくれてたんだ」

すると「好きな子のことなんだから当たり前だよ」と、佐々木くん――深来が笑った。そして、ふと。大きくなっていく隕石に目をやる。

「星座も血液型も、名前も――好きな人のことなら、何でも知りたいと思う。その知りたい欲求には果てがないと思ってさ。だからヒント三つ目、③始まりがあっても、終わりがないことって言ったんだ」
「でも、フラれたり別れたりしたら終わりがあるんじゃないの?」

「そりゃ繋がりは断たれるけどさ。でも、ふとした時に思い出すと思うんだ。今ごろなにしてるかな、とか。元気かな、とかさ。その人との恋が終わっても、その人の存在が消えるわけじゃない。ずっと、心の中に残っていると思うんだ。例え自分が死んでも、その想いは残り続けるんだよ」
「そっか。うん……、それって素敵だね」

私が笑うと、深来も笑った。かと思えば「そう言えばさ」と、ポケットの中に手を伸ばす。

「最後にアンケートを取ったんだ。三日後、詩織にだけ見せようと思ったんだけど」

 そう言って取り出したのは、一枚の紙を出した。そこに書かれてあったのは――

【 もしも生き延びたらしたいことベスト3 】

「これって……」
「うん。さすがに掲示するのは酷かと思って、アンケートだけとった。そうしたら、見てこれ」

 スマホでライトをつける必要はなかった。隕石の光が、紙を明るく照らしている。


【 もしも生き延びたらしたいことベスト3 】

№1 星カップルを続けたい
№2 学校で友達と話したい
№3 いっぱい部活したい