「私、私ね……っ」
だけど、言いたいことが渋滞してて、全く言葉にならない。たくさんの事を伝えたいのに、いざ言葉にしようとすると何から話していいのか分からない。
急げ、急げいそげ。時間は無限じゃない、制限時間がある。その中で、ちゃんと伝えないといけないのに――
「空峰さん」
「はい……っ」
嗚咽をもらすほど泣く私の背中を、佐々木くんがポンと叩いた。そして何度も何度も、撫でてくれる。
「空峰さんの心臓、今どんな音がしてる? 手をあててみて」
「え……?」
いきなり聞かれて驚く。だけど言われた通り心臓に手を当て、自分の音を聞いてみた。すると、自分でもビックリするほど早く動いていて……息つく暇もないほど忙しない。これが、今の私?
「走ってきた、からかな。でも……」
この心臓の音、今まで何度となく聞いた。主に佐々木くんと一緒にいる時が多かった気がする。
「佐々木くんと一緒にいるから、ドキドキしてる……ってこと、だよね?」
「うん。それがヒント①恋とは音が違う、ってことだよ。
じゃあ、次。
今、空峰さんがここにいるのは、どうして? どうして家族と一緒にいないの?」
「それは……」
佐々木くんと会わなきゃって、その想いだけで来た。だから家族に別れを告げて、学校に走った。……そうか、私の中で優先順位が出来たんだ。家族よりも大切な人が、出来たんだ。
「最期に過ごすのは佐々木くんがいいって……、そう思った」
「……そっか。うん、それがヒント②恋とは順番ができる、ってことなんだ」
ふッと笑った時、佐々木くんの目が光った気がした。その光る物は、私の目からも溢れていて――お互い止めることが出来ないまま、何も言葉を交わさないまま。ぎゅッと、優しく抱きしめ合う。
「佐々木くん、これが恋なんだね……?」
「そうだよ。今、空峰さんの中にあるものが恋なんだ。俺を抱きしめてくれる、この君の手こそが、恋の証なんだよ」
「そっか、そうなんだ……。ふふ、素敵だね」
「うん」
喉の奥から、鼻をぬけてキュッと切ない気持ちが湧きあがる。何度も何度も湧き上がって、その度に私は涙を流す。だけど、その涙を受け止めてくれるのは、必ず佐々木くんで――彼の肩に落ちる私の涙が、まるで浄化されるように消えていく。私の気持ちを、佐々木くんが受け止めてくれているようで、切ない気持ちが幸せへと変換される。
だから、切なくてもいい。悲しくてもいい。佐々木くんがそばにいてくれるなら、私はどんな感情だって受け止められる気がするから。
ねぇ、佐々木くんも、こんな気持ちなの?
今、なにを考えてる?
「あ、きたよ」
その声と一緒に夜空を見上げると、瞬く星の中に、一つだけ一際明るい星があった。それは時間を追うごとに大きくなっていて……。ついに隕石が、見える距離にまで来たのだと実感する。
あと何分、こうして二人でいられるだろう。この限られた時間の中、私たちは何をするべきなの? ……って考えたところで分からないから、頭の中にある言葉を、素直に声に出そうと思う。