「佐々木くんにとって、面白い話じゃないかも……」
「まさか、俺をめぐって恋のバトル?」
「それは……、違うけど」
「なら大丈夫だよ。気にせず話してみなよ。時間はたっぷりあるんだし」
グラウンドにある時計を見ると、時間は九時をさしていた。確かに、時間はたっぷりある。意を決して、口を開いた。
「あのね、友達の弥生ちゃんに彼氏が出来てね。弥生ちゃん、自分で言ってたの。星カップル爆誕だ、って」
「うん」
「星カップルの語源は〝すぐ別れるのが特徴〟って聞いたから、この前、言っちゃったの。まだ続いてるの?――って。そうしたら、恋をバカにしてるって、そう言われちゃった。恋をしてる私のことも見下してるんでしょ、って」
「……そっか」
思い出したら、悲しくなってきて。なんで、あんな言い方しか出来なかったんだろうって……、自分を責めた。もっと良い言い方があったはずだし、恋をしらないにしても、それなりの気遣いも出来たはずなのに。
「弥生ちゃんを傷つけた。私って、恋において本当にダメだなぁ……」
「それで落ち込んでたの?」
頷くと「そっか」と、佐々木くんも同じく頷いた。歩くのはいったん中断なのか、見晴らしのいい三階の窓から、グラウンドを眺める。何人かがサッカーを行っていて、ボールを目で追いながら話しを続けた。
「空峰さんはさ、後悔してる?」
「してる、めっちゃしてる……」
「その後悔を抱いたまま死んで、成仏できそう?」
「え」
質問にビックリするも、頭を横に振る。
「成仏できない。未練がありすぎて、この学校でずっと弥生ちゃんを探しちゃうと思う」
「なら、それが答えじゃない?」
私のホラーな回答にも驚かず、佐々木くんはグラウンドを見たまま笑った。
「俺たち、死ぬまであと一週間しかないんだ。限られた余命の中で、人生の後悔がないよう行動していくのは、何よりも尊いことじゃないかな?」
「佐々木くん……」
私たちは、あと一週間しか生きられない。だけど裏を返せば、あと一週間も生きられる。一週間もあるなら、弥生ちゃんに謝る事だって出来るはずだ。
「ほら、行きなよ」
ぽんッと、佐々木くんが私の背中を押した。その先には、下駄箱に続く階段が見えている。
「空峰さんが立ち止まるなら、いつでも俺が背中を押してあげる。だから、自分なりの答えを見つけておいで。どうせできない、なんて思っちゃだめだよ。だって、」
「当たり前を当たり前と思わないのが、私のいいところだもんね……?」
潤んだ瞳を、佐々木くんに向ける。すると彼は、滲む視界の中でも確かに頷いてくれた。
「そうだよ、俺が好きになった空峰さんなんだから、自信を持って。出来ないことなんて無いんだからね」
「ふふ、なにそれ。でも、ありがとう」
「じゃあ」と、スリッパの角度を変える。目指すは、階段。
「あ、ちょっと待って。これ」
差し出されたのは、スマホ。それには、佐々木くんの連絡先だろうQRコードが表示されていた。