「冒険者の職業区分は、最大五つ登録できます。もちろん一つでも大丈夫ですよ。選択肢はこちらです」
別の用紙が横に並べられる。書いてある職業区分は、剣士、弓使い、戦士、槍使い、騎士、魔法使い、狩人、援護術師、その他だ。
「うーん……」
すぐさま『これだ!』と選べるものがなく、フェイは考えこんだ。
悩む様子を見たアイナが、すかさず助け舟を出してくれる。
「簡単に各区分の説明をしますね。剣士、弓使い、槍使いはそのままですね。それぞれの武器を専門に扱う方たちが該当します。戦士は近接武器に加えて、体術も得意な方におすすめしています」
組合的にはそういう風に分類しているのか、と、フェイはふむふむ頷く。
「騎士は、馬に乗って戦うことに長けている方ですね。狩人は弓使いと重なる部分もあるのですが、どちらかというと動物の生態や追跡、罠などについての知識と技術が重視されますし、非戦闘員扱いです」
フェイは一応森で狩りをしていたので、弓も罠も扱えるし、魔法込みで追跡もできる。狩人は選択肢の一つに入るかもしれない。
「魔法使いと援護術師は、世間一般的にはどちらも魔法使いですが、組合では攻撃要員になれる魔法の使い手を魔法使いと定義しています。補助や援護の魔法が得意でも、攻撃魔法が苦手な場合には、非戦闘員の援護術師として登録されます」
確かに、同じ魔法使いでも、戦闘能力があるかないかでは役割が大違いだ。うまく考えられているなぁと思いつつ、フェイは「狩人と援護術師は、非戦闘員」と、頭に入れながら呟いた。
「非戦闘職のみで登録されている方は、危険度が高い魔獣討伐などの任務を単独で請けることはできないので、その点はご注意くださいね。それから、弓使いは準戦闘員で、近接戦が予想される危険任務への参加には一定の制約があります」
「……なるほど」
魔獣をきちんと仕留めるだけの実力がない者が、下手に手出しをするのが一番危険だ。興奮して凶暴化した魔獣が、冒険者本人だけでなく、周辺にも害を与える可能性もある。
「安全を考えると当然ですね」
「ご理解いただけてありがたいです」
アイナはほっとしたように微笑んだ。もしかすると、登録時点で一悶着起きることもあるのかもしれない。
フェイは、説明を聞いた上で改めて職業区分を見直してみる。少し悩んだあと、答えを出した。
「私は……この中だと、魔法使いかな」
「魔法使いですね。失礼ですが、戦闘のご経験は?」
「森で大型の魔獣を狩ったことなら何度も。烈風鳥はちょっと厄介だったけど……火魔牛の群れくらいなら一人でも問題ありません」
火魔牛は、大きく鋭い角を持ち、興奮すると鼻から火を吹く凶暴な魔牛だ。三から五頭くらいの群れで行動するので、対抗手段を持たない人が遭遇すると命を落としかねない。
ちなみに、肉は結構美味しいので、狩りをした時は村の肉屋に卸していた。
アイナは「群れをお一人で……?」と少し目を瞬いたあと、気を取り直したように微笑む。
「……でしたら、問題なく魔法使い登録が可能ですね。援護術師の登録はされますか?」
「いえ、しません。他の人と組む気はないので」
「わかりました。他に登録できそうな区分はありますか?」
狩人を選ぶか迷ったものの、援護術師と同様、他の冒険者と組む可能性が高まるならやめておきたい。
それに、本業である植物医も、冒険者稼業で重視されている戦闘力とはほぼ無縁なので書くのは難しそうだ。フェイは首を横に振った。
「では、早速ですが登録査定を始めますね。実技もあるので、別棟に行きましょう」



