乗合馬車で二時間ほど揺られて、フェイはついに王都の中心部に到着した。
大通り沿いには三階建て以上の建物がずらりとそびえ立ち、露店や屋台もたくさん並んでいて活気に溢れている。生まれて初めて降り立った大都会に圧倒されてしばらく呆けたあと、フェイはフードをかぶり、そそくさと道の端へ移動した。
ようやく目的地についた安堵と達成感はあるものの、右も左もわからない都会で、慣れない人混みの中にいるというこの状況だけで、疲労感がぐんぐん増していく。
ため息が出るとともに、ぐぅ、とお腹が鳴った。
(お腹空いた……。とりあえず、何か食べないと)
フェイは周囲をきょろきょろと見て、美味しそうな林檎を売っている露店に目を留めた。
「すみません。林檎を一つください」
「はいよっ! 大銅貨一枚と銅貨五枚だ」
巾着の中からぴったりの額を取り出して渡す。さっと磨いて渡された林檎は赤く艷やかで、またお腹がぐぅ、と鳴った。
すぐに齧りつきたいのを堪えて、フェイは店主に尋ねてみる。
「あの……冒険者組合の場所はわかりますか?」
「もちろん。この大通りをまっすぐ行った先にあるよ。黒っぽい煉瓦造りで、屋根がとんがった建物だ。門の前にでっかい木が生えてるから、すぐわかるはずさ」
「ありがとうございます」
林檎を食べたあと、教えられた通りに進んでみる。店主の言う通り、立派な木が目印となっていてすぐにわかった。
周辺の三階建ての建物よりもなお高い、とても立派なノーリャの木だ。大きな黄緑色の葉が生い茂っていて、地面に心地よい日陰を作っている。
近づいて見上げてみると、太い枝に横になって、組合の建物を見ている小さな精霊の姿があった。
(組合を見守ってる……?)
木全体をよく見てみる。
樹形を軽く整えるように丁寧な剪定が施されていて、根の周辺には舗装もない。葉の色も形も健康そのもので、大事にされている木なのだと窺える。
(冒険者組合――悪いところではなさそう)
少しほっとしながら、フェイは門をくぐった。



