元々チカがファッションやメイクに詳しいのは知っていたけれどまさかここまでとは。

「チカはすごいなぁ」
思わず声がこぼれる。

「え?」
「あ…そのファッションとか私全然センスないし、そういうの分かるチカすごいなって思って」

チカは私の言葉に目を見開いたあと、なぜか悲しげな顔をして首をふった。

「…そんなことないよ。自分のためじゃなくてある人に見られるために始めただけだったし」

チカの言葉に言葉を失いそうになる。
その切なそうな表情を見ると嫌でも分かってしまう。

その"ある人"とは誰なのかということが。

チカがすぐにはっとしたような表情になる。

「えっと…まぁでも今はそれも私の趣味の一つになってるから!いいのいいの!」

私の表情を見て察したのか、チカはいつもの明るい振る舞いに戻っていた。

チカは、まだ彼のことが好きなのだろうか。

こんなに人を大事に想えることがどれだけ尊いことで、そしてどれだけ苦しいことなのか。

そんなことを考えていると「こら眉間に(しわ)よってるよ」と軽く眉間をおされる。

「はは…ごめんごめん」

先程の空気が嘘かのようにチカはいつも通りに接してくれていた。私もこんな調子でいては失礼だなと思い気持ちを切り替える。

「あっ、そういえば冷って普段どんな服着てるの?」

急な質問に驚いてしまう。
「うーん…普段の服か。シンプルなのが多いかな、黒とか白とか」

「黒か白…じゃあさ、今回は冷があんまり着ない色にしてみない?」

チカの提案に少しだけ不安になる。
あまり服について分からない私はいつも無難に失敗しない黒や白を選んでしまう。

色がつくとなるとその人にあった色だったりとかちゃんと選ばないと大失敗するのではないだろうか。

「本当に大丈夫…?」
「大丈夫!私に任せなさいよ!!」

えっへんと自信ありげに胸を叩かれると断る気にはなれなくて、私はチカに大人しくついていくことにした。