その後、お父さんと今日あった事を色々話した。
まだまだ話したいことは沢山あったけれど私はいつもより早めにベッドに潜り込んだ。

なんだか久しぶりに外を歩き回って疲れたみたいだ。

けれどその疲れに嫌悪やだるさは混じっていなくて、今の私には幸せという感情が合っているような気がした。

「ふふっ…」
疲れているのに幸せなんておかしいな、と自分でも笑ってしまう。


その日は眠りがすぐに訪れ、それは最近はなかった深い眠りについた。

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ふと目を開けると外は明るくなっていた。
久しぶりに夢を見なかったな、と思う。

早く寝たおかげか昨日の疲れがよくとれていて頭はすっきりしていた。


その一方で、私はすぐにチケットの存在を思いだしてしまった。仲がよくても異性は異性だ。

急に水族館に誘ってきてなんだこいつ、とか思われないかな。

というかそもそも仲がいいと思ってくれているのだろうか。もし友達とも思われていなかったら…。

「はぁ、暖になんて言おう…」

私は朝から独り言をぶつぶつと呟いていた。

学校につくと暖はもう学校にきていて、周りにはまだクラスメイトは数人しかきていなかった。

言うなら今がチャンスだ、と思うがどう声をかければいいのか分からない。

いつもどうやって話しかけていたっけ…とぐるぐると目がまわっていると暖とばちっと目が合う。

彼の目を見ただけで、自分の心臓がとくんと脈打つのが分かる。恋を自覚するだけでこんなにも意識してしまうなんて。

「…ぁ」
話しかけたい、と思うのに私の口は上手く動いてくれずに小さな声だけが残ってしまった。

私が固まっていると彼から口を開いてくれた。

「冷おはよう、なんかあったの?」

いつもと挙動が違う私に暖が心配そうな顔をしている。

早く返事をしないと暖に心配をかけると思い私は慌てて返した。
「…っは、暖おはよ!」

…しまった。声が裏返って変な声がでてしまった。
顔が徐々に熱くなるのを感じる。

「ご、ごめんなんか朝から…」

暖の顔をまともに見れない。

暖は目をぱちくりとさせて目を丸くしていた。

何も言わない暖に、引かれた…と落ち込んでいると
控えめな笑い声が聞こえてきた。

彼の方をチラリと見ると、目尻をさげながらへにゃっとした優しい笑みを浮かべていた。

「ははっ…ごめん笑っちゃって。でも、朝から冷の
様子がおかしいんだもん」

と耐えきれないようにまた彼が吹きだして笑う。