その後も他愛もない話をしながら私たちは目的地について、電車から降りた。

「…わー、久しぶりだなぁ」

そこから見る景色は久しぶりで、懐かしかった。


多くの人が行き来をしている横断歩道。

犬の散歩をしている優しそうなおじいさん。

忙しそうに足早に歩いているサラリーマン。

手を繋ぎながら幸せそうにしている恋人たち。

私たちと同い年ほどの男女の集団がわいわいと楽しそうに笑って話している。

時には、誰かが誰かを愛おしそうに見つめている。
きっとあの中に好きな人がいたりするんだろう。

どこを見ても誰かの物語がここにはたくさんあって。私はいつもこの場所が好きだった。

いいことばかりじゃないけれど。
それでも、ここにはたくさんの人達がいて一人一人の想いがある気がするんだ。

私がそんなことを考えているとチカが話しかけてきた。

「冷!なにぼーっとしてるの、早く行くよ!」
満面の笑みをうかべながら私の手をひっぱってくる。

それに対して私も、まってよ、チカ!と笑いながら
私たちは走り出した。

今の私たちは周りからどう見られているだろうか。

仲のいい友達?姉妹?それとも恋人?
人それぞれ見方は違って、どう思われるかなんて分からないものだ。

私たちがつい最近までお互いを傷つけ合っていて一切会話をしていなかった、なんて誰が知るだろうか。

見かけではなにも私たちは分からない。

もしかすると私がさっき見ていた人たちだって、考えていることは違うのかもしれない。

足早に歩いていたサラリーマンは、大事な人に会うために早く歩いていたのかもしれない。

幸せそうな恋人たちだって、実はお互いに不満をもっているかもしれない。

仲のいい男女グループだって、誰かは我慢をしているかもしれない。

それすら私たちは分からない、本当か嘘かも知らない。

前まで私は何もかもを分かった気になっていた。
この世界を達観していたのだ。

ここはひどい場所で期待しても誰も頼りになんてならないんだと。

チカとはもうきっと元には戻れないだろうと。
佳奈は私のことが嫌いなただのいじめっ子なんだと。

何もかも知らずに、決めつけていたけれどそれはどれも知れば知るほど何もかもが違っていて。

私の見方を、私の考えを、暖が変えてくれた。

誰にも期待しない、近付かないようにしていたのに暖と出会ってからは私はおかしなことばっかりで。

前まで街に行ってもここまでの考えに至らなかったのに自分の変化を嬉しく思った。