私は「暖にそう思ってもらえてるなら、嬉しい」と
嬉しさと恥じらいの入り交じった笑顔でそう伝えた。

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放課後を迎えた。

私は暖に「またね」と伝えてから、チカと共に電車に乗り街の方へと向かった。

そうだ、お父さんに念の為連絡を入れておこう。

[今日、友達と遊ぶから帰り少し遅くなると思う]

最近はどこにも行っていなかったものだからきっとお父さんもびっくりするだろうなと思いながらメールを送信した。

ふと私の横に座っているチカの方を見てみる。

特に何も話していないにも関わらず、チカは顔にパッと花が咲いたような屈託のない笑みを浮かべていた。

チカを見ていると私もつい表情が緩む。

私の視線に気付いたのか、彼女が口を開いた。

「冷と一緒にいると、何してても楽しいんだ」
と白い歯を見せながら笑いかけてくる。

「っ!…ははっ、なにそれ」

何とも思っていないかのように私は軽く返した。

けれど私の目に、ほんの少しの涙がたまっていて。

その涙には気付かないフリをした。

チカの嘘一つない言葉が嬉しくて、つい泣いてしまったなんて言ったら恥ずかしいから。

私はチカに決してバレないように自分の目に溜まる涙を袖でごしごしと雑にふいた。

「私も、チカと一緒にいると楽しいよ」
とらしくもないことを言う。

きっと言わないと、また前のように後悔してしまうから。思ったことを言葉に伝えようと最近は心がけている。

まだまだ言えないこともたくさんあるけれど。

そう言う私に「え?!冷が冷じゃないんだけど!」
と茶化してくる。

冷がいつもとちがうよー!と騒いでるチカを横目に、私はふっと笑ってしまった。

チカはこういう時だけ素直じゃないな、とつくづく思ってしまう。

だって、こうやってふざけている彼女の目には私と同じようにうっすらと涙がうかんでいて。

二人して素直じゃなくて、何をしているんだかと私は自分に呆れてしまう。

でも、そんな時間が今はすごく幸せだった。