私はその日、久しぶりにチカと帰った。

「ねぇ、冷ごめんね。私冷の気持ち知ってて意地悪しちゃってたんだ」

「…なんのこと?」

「冷、暖くんのこと…好きでしょ?」

「っ!…っごほごほ」
急なチカの言葉に驚いてしまいつい咳込んでしまう。
私ってそんなに分かりやすいのだろうか。

「ふふ、冷って案外分かりやすいんだよね〜今だって私って分かりやすいのかって思ってたでしょ」

チカの言葉に図星で返す言葉が見つからず目を逸らす。

「冷のこと見てれば分かるよ、暖くんと話す時の冷はすっごく幸せそうなんだもん」

と切ない笑顔を浮かべてチカは言った。

「…そうなの?」

「そうだよ!目見たら分かっちゃうんだから!
心の底から好きな人を見つめる時ってね、優しくて、愛おしくて、幸せそうなそんな目をしてるんだよ」

チカのその言葉はきっと、自分が誰かを想っていた時の気持ちなんだろうなとチカの表情を見ると嫌でも分かってしまう。

「うん…そうだね、チカの言う通りだ」

「私ね、最初暖くんに話しかけるつもりなんて別になかった。でも冷の表情見てたらさ、なんかやり返したくなっちゃった」

といたずらっ子のような笑みで言う彼女は、やっぱりかわいいなぁと思ってしまう。

でもその後すぐに、チカは申し訳なさそうな顔に変わり「倒れるなんて思ってなかった」と後悔の表情を浮かべていた。

「もう大丈夫だよ、それにあれはたまたま寝不足だっただけだから。これは本当だよ」

とチカが自分を責めないように念を押す。
「でも…」と言い出す前に私はいつもより大きな声でチカの言葉を遮った。

「こら!もういいでしょ?おあいこって話したじゃん」と笑顔でチカに伝える。

チカはそんな私の行動に驚いたのか目をぱちくりさせる。
その後チカはにっこりと微笑んで、「冷、少しだけ変わったね」と言った。