私は、冷のせいで苦しんでいるのに。
冷がいなければ湊をとられずにすんだのに。

フツフツと抑えて、抑えて、もうふきだしそうになっている感情が溢れそうになった。

その時、言えなかった。冷のことを庇えなかった。
「…それなー、私も最近嫌だったんだよね」

自分の口から湧き出た言葉に驚く。
でも、もう後戻りはできなかった。

「まじー?!うけるんだけど」
「じゃあこれからはこっちきなよ!チカって呼ぶね」

_____「うん、よろしくね」

その日に私は、湊のことも、冷のことも話した。

自分からでてる言葉とは思えないどす黒いなにか。
今までのものを吐き出すかのように、佳奈たちに伝えてしまった。

佳奈たちは私の言葉に賛同してくれた。
ひどいね、大変だったね…と冷のことを悪く言う言葉もたくさん聞こえた。

それが、どうしようもなく私を満たしてしまった。

「…いっつも皆には冷たいくせになんで湊にだけあんなデレデレしちゃってんの」

最後に言った言葉は本心ではなかった。
けれど、私は止まれない。
醜くて、弱くて、脆い私しかもうそこにはいなかった。

その日は家に帰って、後悔の念が押し寄せてきた。
なんであんな事を言ってしまったのかと。

「…明日からどうしようかな」
佳奈たちには謝って、冷にちゃんと話しかけにいくべきだと思った。

私はそう思って次の日の朝、冷に話しかけた。
でも冷の顔は歪んでいて、私に何も返さなかった。
「………」

その時私の言葉が冷に届いてしまったんだと気付く。