「冷かー!かわいいよね、湊面食いすぎじゃん」

「はは、ほんとだよな。冷ちゃん見た時に何だこの子めっちゃかわいい!って思っちゃってさ」

そうやって笑う湊にいつもは私も一緒に嬉しくなるのに、今ばかりは笑えなかった。

確かに冷はかわいい、と思う。

黒髪のロングでサラサラの髪型をしていてふわふわしている私とは大違い。

少しだけつり上がった目元はクールで美人という印象が似合っている。

冷は自分のことを平凡だと言って私のことをかわいいと言ってくれるけど、自分のことを卑下しすぎだ。

だって、私が一番手に入れたくて、でもそれでも手に入らない人を意図も簡単に射抜いてしまうのだから。

私とは真反対の冷。
私のように周りにヘラヘラと取り繕ったりせずに凛としていて、でも本当は優しい子。

そんな冷が大好きで、でもその時はそんな冷が、憎くてたまらなかった。

私はその後、応援してるから!と言って湊と別れた。
家に帰ると、抑えていた涙が次から次へと溢れでる。

枕に顔を押し付けて自分の嗚咽が周りに聞こえないようにする。

私が一番好きだった人。

私は湊を好きなのと同じくらい冷のことも大好きだったはずなのに。

この時がくるのは分かっていたはずなのに、いざくるとなると耐えられないものなんだと思う。

それにその相手が、自分の一番仲の良い友人だということも私の心を壊した。

そして一番に、私はこの時自分の醜さを知った。
自分を心底嫌いになった。

冷が悪いわけじゃないのに冷に嫉妬して嫌な感情が沸きあがる。
そんな自分が、憎くて憎くて、たまらなかった。