「私は、チカの本当の気持ちを知りたい。聞かせてほしい」

チカは唇をかみしめて、泣くのを堪えている。
少し待つと、チカは落ち着いたのかぽつぽつと話し始めた。

「…最初は冷のこと本当に大好きだった。冷たいなんて思ってない、冷はそう見える時もあるけど、でも本当はすごく優しい子だった。私が、一番それを分かってたの」

チカは、過去にあったことを話し始めてくれた。
私はそれを、黙って聞いていた。

* Chika

「ねぇねぇ冷!そういえばあの二人付き合ったんだって知ってた?!」

「知らないし、興味ない」

「ちぇー、冷は相変わらず冷たいんだから。そろそろ彼氏とか作んないの?」

「…私は恋愛とかあんま分かんないし、それこそチカはどうなのよ?たくさん告白されてるのに誰とも付き合わないよね」

「んー、だっていい人いないんだもん」

「理想高すぎない?」と笑う冷は冷たいと言われていて周りからあまりいい噂はなかった。

けど私は知っていた。
冷が本当はすごく優しいことを。

だから冷には幸せになってほしいと、本当に心の底から思っていた。
この気持ちは嘘じゃなかった。

でも私の気持ちはあっけなく壊れてしまった。

ある日、私と冷が話している時に幼なじみの湊が教室にきたのだ。

「おーチカいたいた、数学の教科書忘れちゃってさ貸してくんね?」
と手を合わせて子犬のような目で私を見てくる。

「えー、どうしよっかなあ」

「頼むよー、チカしかいないんだって」と言われるとふざけていると分かっても、満更ではなくて。

「もう、湊は仕方ないんだからほんと、ちゃんと返してよ?」と笑って教科書を貸す。