暖が、見守ってくれているのがわかる。

私とチカは空き教室があるところまで歩く。
その間は無言で、私たちはお互いに何も言わずにそのまま空き教室へと進んでいった。

教室についても、私達の無言の時間が続く。
私はその静寂を断ち切るように話し出した。

「…ごめんなさい。私、チカの気持ち何も知らなかったんだ。チカが湊を好きだったことも、私の態度がチカに嫌な思いをさせてたことも」

チカは何か言おうとするが、目を逸らして口をつぐんでしまう。

それでも私は一方的に話を続けた。

「私、チカに甘えてた。こんな私でも友達でいてくれて、認めてくれたのはチカだけだったから」

私はゆっくりと息を吸って呼吸を整える。
言葉を噛み締めて、しっかりとチカに伝わるように。

「でもそれ以上に怖かった。
チカに責められて、嫌われることが。
だから逃げてチカの気持ちなんて聞かなかった」

チカは何も言わない。
でもその変わりに目からは今にも涙が溢れそうで、
辛そうな顔をしていた。

「チカは…いつもなんでそんな辛そうな顔をしてるの?」

私の問いかけにチカは初めて、小さく口を開いた。
それはあまりにもか細くて苦しそうな声だった。

「……私、最低なんだよ」

その言葉に昨日の自分が重なった。
『私、最低でしょ?』
暖が伝えてくれたんだ、君は最低なんかじゃないって優しい人間だって。

だから、私もチカに伝えたい。

「チカは、優しい。だから苦しそうな顔をするんだ、最初は何でか分からなかったけど、今わかった。

チカも……辛かったんでしょ?」