その様子を見た暖は、私に対してちょっとおいでとでもいうように軽く手招きをしてきた。

なんだろう、と思いながらも暖に耳を傾けると、
「自分のペースでいいんだよ。冷なら大丈夫だから」とこそっと耳打ちしてくる。

その言葉を聞いて胸が熱くなる。
暖の言葉は、なんの根拠もないはずなのになぜか安心してきっと大丈夫だなんて思ってしまうんだ。

なんで暖はいつもタイミングよく私を助けてくれるんだろうか。

私が分かりやすいのか、それとも暖がすごいのか。
真相は分からないが、暖の言葉を聞いて私の気持ちがさっきよりも明るくなったのは確かだ。

刻々と時は過ぎていき、ついにお昼の時間になる。
私はチカに話しかけようと決意しチカに近寄ろうしたその時、先に話しかけた人がいた。

「チカー、お昼食べ行こー!」
それは佳奈だった。

「うん、行こ行こ」と返すチカは席を立って行ってしまいそうだった。

足がすくんでしまう。
今私が話しかけにいったら、佳奈やチカにどう思われるだろうか。

もしそうなったら、もうチカと話すチャンスは…。
そんな時暖の言葉を思い出した。

_____「冷なら大丈夫だから」

私は大きく息を吸ってから、意を決して声を出した。
「…チカ!!」
周りが私の声に驚いて振り返る。
思った以上に声がでてしまった自分が恥ずかしくてたまらない。

けれど、そんな中でも暖は優しく私を見つめてくれていた。

「……」
チカは無言で何も話さないが私を見つめていた。
佳奈が「え、なに…早く行こうよチカ」と言うが私はそれを止めるように話を続ける。

「チカと、二人で話がしたい!嫌なことだって分かってる…でも弱い私のままでいたくないから」

そう言うとチカは一瞬目を見開いて、私に言葉を返そうと口をあけようとする。
けれど、そんなチカを阻止するかのように佳奈が話しだした。