心配という言葉でふと暖のことを思い出す。

さっきの暖はどうもいつも以上に優しくて、私のことを昔から知っているかのような口調だった。

それに私なんかのために必死になってくれていた。

もしかして、私たちは昔会ったことがあるのだろうか。そんな疑問がふと浮かぶが、そんなわけないかと振り払う。

昔会ったことがあるならきっと覚えているはずだ。
暖は目立つし、忘れるわけがない。

じゃあなんで…と思うが頭に浮かんだもう一つの答えをすぐに消去する。
そんなわけがない、暖が私に好意を抱いていたら…なんて都合がよすぎる話だ。

それに暖は皆に優しい。
きっとあれが私じゃなくて、他の人だったとしても暖は間違いなく同じことをするだろう。

「落ち着け…私」と口に出して自分に言う。
他のことを考えよう、と気をそらそうとした時にはチカのことを思い出した。

そういえば…チカはあの時暖に何を説明したのだろうか。私が倒れたあの瞬間、チカは今までで一番辛そうに顔を歪めていた。

何を言ったのか、チカが私のことを本当はどう思っているのか私にはまだ何も分からない。

分からないままじゃ、きっと駄目だ。
それだと私は変われないから。

暖が言ってくれたんだ。私を認めてくれたんだ。

それなら私は、暖が言ったように本当に優しい人間になりたい。
暖はああ言ってくれたけど、私はまだ自分に自信をもてていないし冷たい人間だと思っている。

チカとしっかり向き合うんだ。
今までされたことも、自分がしたことも、何もかも
ひっくるめて私はちゃんと、チカと話がしたいから。

私は決意を固めて、明日がくるのを待つことにした。