その日は、その後に教室に行くのも気まづくて保健室の先生が今日は帰っていいよと言ってくれたのでその言葉に甘えることにした。

家に帰ると、今にも魂がぬけてしまいそうな顔つきでお父さんが飛び出してきた。
「…冷、学校で倒れたんだろう？大丈夫だったのか？！」とあわあわと顔を真っ青にしながら聞いてくる。

わざわざ私のために仕事を放り出させてしまったのがすごく申し訳なく感じた。

「ごめん、お父さん…軽い寝不足だったみたいで、
でも今はもう全然大丈夫だよ！」と心配をかけさせないよう出来るだけ笑顔をつくる。

目の周りはあの後頑張って冷やしたがどうしてもまだ赤みが残っていたらしい。

お父さんが息を呑んで驚愕する声が聞こえる。
「…！泣いたあとがあるじゃないか？！学校で何か嫌なことでもされたのか？」

やってしまった、と頭を抱える。お父さんは一度こうなるともう止まらないのだ。

どうにも心配性なのかいつもは冷静なのに私のこととなると気が動転してしまうらしい。

「お父さん！大丈夫だって、頭ちょっと打ったみたいでその時に痛くて泣いてただけだから！」

「…本当か？頭は大丈夫なのか？もう痛くないか？」

「大丈夫、大丈夫だから！」と言い寄るお父さんにそう伝えて私はそそくさと自分の部屋に行った。

「はぁ、疲れた…」
声が零れるが、なんだかんだ私はそんなお父さんの言葉がほんの少し嬉しいのだ。
過保護すぎるのではないかとたまに思うことはあるが、私のことをそれくらい心配しているのだと思うと嬉しくもなる。