今まで堪えていた涙がストッパーを外したかのように溢れて止まらない。

そんな私の涙を暖は愛おしいものでも見るかのように、優しく袖で(ぬぐ)ってくれる。

「は…るっ…そでよごれる」
そう泣きながら言う私に「よごれないよ」と微笑む彼はどこまで私を甘やかす気だと思ってしまう。

数分か経過して私はやっと涙がおさまってきた。
目の周りは真っ赤に腫れて鼻をずびずびとならしている。

今になってやっと、この現状がすごく恥ずかしいことに気付く。
最悪だ、好きな人の前でこんな痴態を見られるなんて。今すごくひどい顔になっているはずだ。

好きな人……好きな人?
そういえばまだ暖は私の手を握っているではないか。

ぼっと一気に顔が真っ赤になり頭から煙がでてしまいそうなのを感じる。
ついさっき恋を自覚したばかりだというのに、今まさにその好きな人に手を握られているなんて急に意識してしまう。

「…?冷どうしたの、顔真っ赤だよ」

「手、あの、繋いだままだから…」
そう言い顔を背けるがきっと私は今耳まで真っ赤だ。隠そうとしても暖にはきっとバレバレで。

「そういえばそうだったね。ごめん」と言いながらなぜ暖は手を離さないんだ。

言葉と行動が矛盾している彼の行動にプシュプシュと頭が今にもパンクしそうになる。

「落ち着いた?」
そう言って優しく笑う彼にどうしても胸の高まりが抑えられない。
「落ち着いた…」と私は馬鹿の一つ覚えのようにオウム返ししかできなくなった。