そう思っていると隣から声が聞こえた。

「…っ冷!起きたの?ごめん、僕寝てたみたいで」
申し訳なさそうに話す彼に「大丈夫だよ」と返す。

「もう体調は大丈夫?辛くない?」と立て続けに私の心配をしてくる彼に大袈裟だなぁ、と笑ってしまう。

「もう大丈夫だって、ちょっと寝不足だったみたいで…はは、夜更かししすぎちゃった」と茶化す私に暖は何も言わない。

もしかして怒っただろうか?
そう思い、暖の方を見ると彼はすごく辛そうな顔をしていた。

「…暖?」

暖は私の手を強く握りしめてきた。

「冷は…すごく優しいよ。僕の前では、無理なんかしないで。我慢とかしなくていいんだよ」

そう言う彼はすごく真剣な顔をしていて、私の手を握る力がよりいっそう強くなった。

「私、無理なんて…」
無理なんてしてないよ、とそう言いかけた時暖がそれを止めるかのように口を開いた。

「さっき、聞いたんだ。チカさんから、色々」

そう言う暖は少しばつが悪そうな顔をしている。

私は思考が停止しそうになる。
チカから?何を聞かされたの?

もしかして過去の話…?

私がひどい人間だということを暖に知られてしまったのかもしれないと思うと頭が真っ白になる。

「…失望したよね」
その言葉だけが私の口からこぼれた。

でも暖はそんな私に驚いたような顔をした。

「なんで?冷は何も悪いことなんてしてないよ。僕が冷に失望することなんてこの先も絶対にないよ」

その言葉がすとんと私の心に落ちてくる。
そんな言葉をもらえるなんて、思いもしていなかった。