今日は朝から寝不足なせいか気分があまり良くないのだ。
それに加えて授業中もチカはずっと暖に話しかけているときた。

私は暖とはもう話せないと分かっていたけれど、分かっていたはずなのに。

こうやって目の前にチカと暖が話しているのを堂々と見せられてしまうと気分が落ち込んでしまう。

もう分かっている。
私は暖のことが────"好き"なんだろう。

ずっとこの気持ちが何か分からなかった。
いや、分からないフリをしていた。

昔から恋愛というものが分からなくて、彼氏なんてできたことはないし恋もしたことがない。

あるとすれば、小さい頃に男の子に初恋というものをしたことがある気がする。
けれどその子のことに関してあまり覚えていないし、きっと足が速いからみたいな適当な理由で好きになったに違いない。

だからこそ、怖かったのだ。この気持ちを認めてしまうのが。

付き合ってはいないけれど、一度チカの好きな人を奪ってしまった私が誰かに恋なんてしていいのだろうかと。

そんな気持ちになってしまう。
それにその相手は暖だ。今まさに目の前でチカと話している人。

皮肉な話だな、と思う。
初めて恋をした人がまさかこの人だなんて。

チカは、暖を好きなのかな。
いつか、暖も私と会ったことも話したことも全部忘れてチカのことを好きになるのかな。
そんなことを考える。

そう思うと、ひどく自分が虚しくて心が苦しくなった。

授業の終わりのチャイムがなった。
皆が号令の合図とともに立つのになんだか腰があがらない。

早く立たなければ、そう思い無理やり腰を起こすがふらついて軽いめまいを感じる。

寝不足だったせいだろうか。それとも、暖とチカを見ていたからだろうか。

どっちにしろ自業自得だな、と思う。