その日は深く眠れずに、とうとう寝不足のまま次の日を迎えた。

重いまぶたを無理やり持ち上げながら、学校につくと暖が教室にいるのが見える。

私は昨日のことを思い出して深くため息をつきそうになるがそれを呑み込む。
急になんの理由もなく拒絶されて、暖も私のことを嫌いになったかもしれない。

教室にはいっても私は出来るかぎり暖の方を見ないように自分の席へとついた。

まだ教室にはチカも佳奈もいない。まばらにクラスメイトがいる程度だ。

これならゆっくり本も読めるだろうと思い私はイヤホンをつけ周りの音を遮断した。

そして本を読む。
懐かしい気分だ、つい最近のことなのに暖と朝に話していたりしたからか本を読む時間はあまりなかった。

私は暖がこちらを見ていることにも気付かずに、久しぶりに本の世界に没頭した。

しばらくすると涼香先生が教室にはいってきた。
夢中になっていた私はイヤホンを急いで耳からはずして本をしまう。

「…昨日、揉め事があったみたいだな。誰と誰かは知らないが喧嘩はやめなさいよ」と面倒くさそうに涼香先生が話している。

その発言にドキッとする。
これはきっと私と佳奈のことだろう。

誰かが先生に言ったのだろうか、見ているだけで何もしないくせにと少しムッとしてしまう。

そんなことを考えていると涼香先生はまた予想外のことを言いだす。

「今日は席替えでもするか。気分チェンジだ」と意味のわからないことを言っている。

何が気分チェンジなのだろう...。絶対適当に言っているだろうと思いながらこの人はそういう人か、と諦める。

この窓際の席は案外気に入っていたのに。
それにこのタイミングでチカ、佳奈、暖の三人の誰かとは絶対に近くの席になりたくない。

私は頼むぞ!という願いをこめて、一思いにくじをひいた。