その後も私たちは色々な話をした。
帰り道に猫を見かけただとか、クラスの男子たちが面白くてさとか、そんな他愛もない話。

けれどどんな話をしている時も暖はすごく楽しそうで、それにつられて私も楽しくなる。

さっき見せた表情が少し気になるけれど、聞くのはやめておいた。
私の見間違いかもしれないし、それにこの時間を壊したくなかったから。

私はもう深く考えることはやめて暖との時間を楽しむことにした。

この瞬間はまさに"幸せ"という言葉がぴったりで、いつまでも終わらなければいいのにと思う。

けれどその時私はまだ知らなかったのだ。あんなことに、なってしまうなんて。

私は浮かれていた。
暖と出会って世界が少し変わったように見えた。

もしかしたら私も自分を変えられるかもしれないと、名前なんか関係ないんだと。

けれど世界は甘くなんてなくて。
私はなにも変わってなんていなかった。

暖と一緒にいただけで、変わったように思っていただけで私自身は何も変わらない。

私はある出来事によってその事を思い知らされた。