「もしさ、…もし、他の人に誘われたりしたらその人と帰っても全然大丈夫だからね!」
ちくりと痛む心を抑えながらも、咄嗟に口からはそんな言葉が零れた。

もしチカや、チカ以外にも彼と話したいと思う人がいたら暖に断らせてしまうのは申し訳ない。

私と約束なんかしなきゃよかった、なんて思わせたくない。

けれど暖の方を見ると少し不服そうな顔をしていた。
何か悲しませるようなことを言ってしまっただろうか。そんな時暖がまた口を開いた。

「──約束はちゃんと守るよ」

すごく優しくて、それでいて真剣な表情で話す。
あまり今までに見たことのない暖の表情に少しドキッとしてしまう。

暖はふーと息を整えてから喋りだした。

「冷は優しいからさ、きっと僕が後から困るかもって考えてたんでしょ?大丈夫だよ、誰に言われても元々冷と帰るつもりだったし」

私の心を見透かしたように言う。
これで冷に断られてたらめっちゃださいけどね、と眉を下げて笑う彼は少し可愛くみえる。

眉を下げて笑うのは彼の癖なのだろうか。私はこの暖の笑い方が好きだった。

優しくて、パッと目を離したら消えてしまいそうな儚い表情。