何も聞きたくない。話を途中でシャットダウンする。

分かることだったのに。勝手に一人で落ち込んでほんとばかみたい、と自傷気味に笑う。
近いうちにチカと暖はいい感じになるのかななんて思いながら私は早足で昇降口の方に向かった。

「あれ、雨だ…」

空は、雲行きが悪くどんよりとしていた。予報では雨ではなかったのに。

チカが陰で私のことを言っていた日のことを思い出す。
あの日も雨が降っていた。土砂降りの中一人で帰ったのだった。

まぁでも、今日は小雨だし少しくらい傘をささなくても大丈夫だろう。そう思って私が足を踏み出した瞬間に、突然声をかけられた。

「れい!!」

はぁはぁと息を切らしている声の主の方を見るとそこには暖が立っていた。

暖…どうしてこんなところにいるのだろうか。それにすごく急いでいるような様子だ。

「傘もってないんでしょ?僕多分冷と方向一緒だから一緒に帰ろう」

「…っえ?!そんな申し訳ないよ。それに暖帰ったんじゃなかったの?」

「ん?あぁ…多分先生に呼ばれてたからかな。今後のこととか、色々話してて…」

息を整えながら話す暖はよっぽど走ったのだろうかと思う。

「冷と話したかったんだけど教室に戻ってもいなかったから探してて」
ははっ、と恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべている彼の予想外の発言に驚く。

こんな些細なことでも少し嬉しく思ってしまう自分が嫌になる。暖が私を探してくれていたなんて、なんだか心が温かくなった。
きっと暖は優しいから昨日の私に対する心配がまだ残っているんだろう、決して期待はしないように自分の心に言い聞かせる。

「そうだったんだ、でもこんな小雨だしやっぱり申し訳ないよ。私は大丈夫だから」

もしチカが暖のことを好きになったら、私は邪魔しちゃいけない。
前のようにチカを悲しませることになるから。

私は自分の気持ちを抑えながら暖にそう伝えた。